「リンゴは2年に1度しか実が成らないもの」
私はフランス・ノルマンディーのシードル街道を訪れた時、ある醸造所でこのように説明された。 「リンゴは2年に1度しか実をつけないので、同じ銘柄のシードルでも毎年味が異なる」と。 つまり、その醸造所では、一年ごとにリンゴを収穫する畑が変わるのだ。
それが隔年結果によるものだということは、リンゴ生産者なら容易に想像がつくかもしれない。 フランスのシードル用リンゴ生産において、摘果はそれほど重要視されておらず、機械や薬剤で行うことはあっても、日本のように手作業で摘果することはない。
摘果をしないと、果実はとても小さくなる。 したがって、手で収穫する場合は作業時間が長くなり、機械での収穫もより難しくなる。 また、果実の成熟にも影響があり、プレスした果汁の糖度は低くなる。 当然、枝の破損も多い。
シードルリンゴ(Pomme à Cidre)は、もともと豊産生で、隔年結果の傾向が非常に強いという特徴があり、オートティージュ(高木仕立て)の場合、一本の木に数千個のリンゴが成ると言われる。
フランスのシードル生産者のなかには、収穫量が少ない(裏)年はシードルだけを仕込み、多い(表)年はカルヴァドスもつくるといった、一年おきの生産サイクルをずっと繰り返している人もいるという。 こうしたことを考えると、フランスの生産者は、ある程度、隔年結果を受け入れているようにも思われる。
リンゴは、人間が摘果をしなければ隔年結果する(傾向にある)。 それが本来の姿だとすれば、確かにリンゴは2年に1度しか実が成らないものかもしれない。
2020.12.30 Ko HAYASHI
Photo:Le Verger Haute Tige 2015.10. 高木仕立てのオートティージュと呼ばれる果樹園は、伝統的なノルマンディーの風景の一部でもあり、カルヴァドスの生産に不可欠。 なぜなら、カルヴァドスを製造するための果樹園のうち、オートティージュの面積の割合が規定されているから。