NOISETTINES DU MÉDOC – “Tu croc.. tu crac..”

2023.3.22、フランス・ボルドーにあるヘーゼルナッツのお菓子屋 Les Noisettines du Médocを訪問しました。

Noisettines du Médoc ノワゼッティーヌ・デュ・メドックは、ジロンド川左岸、ワイン用ブドウ畑の広がるメドック地区 Blaignanに工房と店舗があり、前日に訪問したシャトーラグランジュからは遠くない。

Noisettines ノワゼッティーヌとは、フランス語でヘーゼルナッツを使用した小さなお菓子のことをいい、Noisettines du Médoc ノワゼッティーヌ・デュ・メドックとは、Noyez夫妻によってつくりだされたコンフィズリで、今ではフランス語の辞典 Petit Larousseにも「Noisettines:Confiserie faite d’une noisette enrobé de caramel」として定義付けられている。

ノワゼッティーヌ・デュ・メドックは元々、Edith Noyez夫人のために、料理人だった夫のMichel Noyezがつくっていたもので、1649年の古いレシピを改良し、ヘーゼルナッツで何度も試作を重ねて完成したという。

Noyez家は、1970年代末、200年以上も廃墟となっていたメドックの古い酒蔵に住み着いたが、その頃は、家族の台所でノワゼッティーヌをつくっていた。夫妻は、家業として一緒に働くことに決め、専用のキッチンを自宅に設置。夜 Michelがつくったお菓子を、早朝からEdithが地元のマルシェやイベントで販売するうちに、その評判は口コミで広がる。初めは村の人たち、そして近隣の村、さらに遠方からもお客さんが訪れるようになった。

当初は小さな銅鍋を使用しており、1回の仕込みでたくさんは作れなかった。1982年、Talence(ボルドーの隣町)の機械工学の大学教授と共に、自転車の車輪やワイパーモーター、バイクのチェーンなどを使って、バーナーの上で銅鍋を回転させる調理器具のプロトタイプを開発。1985年には、実家の隣に専門的な工房を建設し、次第にフランス全土から客を迎えるようになった。

2002年には Guide des Gourmands「Coq d’Or」を受賞し、2018年 Collège Culinaire de Franceに質の高い職人として認められる。

ノワゼッティーヌ・デュ・メドックは、粒揃いのヘーゼルナッツを自家製シロップに浸してじっくり加熱し、カラメリゼするのだが、そのレシピの詳細は秘密にされており、ナッツ表面に独自のコーティングを施す点に特徴がある。着色料や保存料を一切使用せず、伝統的な製法で少量ずつ全て手作り。香ばしくて甘さと苦味のバランスが程良く、口当たりは軽やかで、歯応えがありながらも硬くない。製品に使用するヘーゼルナッツは、自家栽培もしているとのこと。

Noyez家は、現在でも、人口250人ほどの小さな村 Blaignanで職人的な手仕事を守っており、ボルドー市内にも直営店はあるが、メドックのお店では、創業当時からのNoyez家の歴史を感じることができる。

今回の訪問では、Romain Noyez氏にとても親切に対応いただいた。(ボルドーで、あるいは日本で再会できることを望んでいます)

2023.5.29 Ko HAYASHI