2023.3.28、フランス南西部の町 Cancon を訪れた。
Canconは、ボルドーから東へ約100Kmほど、Lot-et-Garonne県にある人口約1,300人の小さな町。この地域はプルーンの産地として知られるが、近年は「フランスのヘーゼルナッツの首都」などと紹介されるようになった。
Canconには、ヘーゼルナッツとクルミを生産するUNICOQUEという組合がある。
UNICOQUEは、1979年、農業経営の多角化によって収入の安定を考えた農業者たちが集まり「Agri-Noisettes」という名前で設立。当初、事業展開にはリスクがあり、ヘーゼルナッツは二次的作物という位置付けだったが、その数十年後には、この地域の重要な栽培品目へと成長した。
現在、350以上の組合員によって、年間10,000トン以上のヘーゼルナッツを生産。殻付きヘーゼルナッツのヨーロッパ市場 シェア50%を獲得し、この分野の欧州No.1生産者となる。そして、週刊誌「Les Echos」の「最もダイナミックなフランス企業500社」のうちの1社に選ばれた。
UNICOQUEの工場は、Cancon中心部から車で5分ほどの郊外にある。
工場では、ヘーゼルナッツの栽培・加工・出荷に至る工程を紹介するため、期間を限定して見学者を受け入れている。だが、主に学校などの団体を対象としているという理由で、今回は視察をすることはできなかった。
UNICOQUEは、この地域の農場で生産されるクルミやヘーゼルナッツを組織的に市場へ供給・販売するため、低コストで収益性の高い生産体制を確立している。果実の収穫は機械化され、工場では革新的な技術(レーザー・超音波などを用いた光学・視覚的選別機械など)を導入。また、専門業者と連携して灌漑用貯水池を設計し、各圃場の水資源管理を最新の設備・手段で行うなど、ヘーゼルナッツの栽培技術指導を含めて、組合員のバックアップや新規立ち上げ農業者も支援する。
UNICOQUEによると、フランスで栽培されているヘーゼルナッツは、ENNIS、CORABEL、FERTILE DE COUTARDのような大粒品種であることが特徴で、それらのほとんどは(消費者が割るための)殻付きで販売される。一方、香りの良いSEGORBEやPAUETETなどの小粒品種は、殻を取り除いた状態で出荷されるとのことで、製菓やペースト製品などの加工用に仕向けられると考えられる。
KOKIというのは、UNICOQUEのヘーゼルナッツに使用されるブランド名で、KOKIの殻付きヘーゼルナッツは、2019年に「HVE認証認証」(Haute Valeur Environnementale 高環境価値)を受け、現在、ヨーロッパ市場で4,500トンを販売。目標は欧州シェア70%だという。
Canconの中心部には、UNICOQUEの直営店 KOKI LA BOUTIQUEがあり、様々な形態に加工されたヘーゼルナッツ製品を販売する。
実際に訪問して感じたのは「こんな小さな田舎町の、なんて事のない店なのに、客が途切れずにやってくる」ということ。買い物客は地元の人が多いように見受けられ、ヘーゼルナッツがこの地域に根付いていることを実感した。
2023.5.22 Ko.HAYASHI