La Défécation:ペクチンの「質」

Montée du chapeau brun シャポーブランの上昇

プレスされた果実は、 2~3日後、リンゴに自然に含まれる酵素の働きにより、ペクチン(Acides Pectiniques・Acides Pectiques)とカルシウムが結びつくことで不溶化し、小さな固まりとなる。 これらは “Pectinate de Calcium”といい、果汁と同じ比重のため、そのままでは浮上できない。

1~2日後、 果汁中に浮遊するペクチナートの固まりは、アルコール発酵が始まる前の、非常に微力な発酵に由来する炭酸ガスによって ゆっくりと浮上し、シャポーブランとしてタンク上部に現れる。

*このステージでは、PME(ペクチンのメチルエステル基を脱メチル化する酵素)による、2つの物質を結合させる働きが知られている。 PMEは、ある物質と結びつき、さらに他の物質と結合することで別の複合体を形成、(活性・不活性にかかわらず)遊離する。

ペクチンの「質」は、果実の成熟によって変化する

未熟な果実における ペクチンは不溶性で、植物細胞壁のプロトペクチンという状態にある。 果実の成熟・進展にしたがって、ペクチンの分解・低分子化が進み、デフェカシオンに最適な「質」を備える。 しかし、成熟の進み過ぎたリンゴのペクチンはガラクツロン酸となり、シャポーブランの形成には関わらない。 早過ぎても、遅過ぎてもデフェカシオンは難しくなるため、生産スケジュールと果実の成熟管理が重要となる。

Protopectine プロトペクチン (未熟)

  ↓    酵素 Protopectinase

Acides Pectiniques ペクチニン酸             ( + Calcium  Chapeau Brun

  ↓   酵素 Pectine Méthyl Estérase

Acides Pectiques ペクチン酸 + Méthanol       ( + Calcium  Chapeau Brun

  ↓   酵素 Polygalacturonase、Acide pectique Transéliminase

Acides Galacturoniques ガラクツロン酸 + Méthanol (過熟)

*Acides Pectiniquesの約2%は、 PMEとは別の酵素(Polyméthyl Galacturonase、Pectine Transéliminase)によって Acides Galacturoniquesへと変化し、澱として沈澱してしまうため、全てのペクチンがゲル化することはない。

シャポーブランの上昇

2022.3.29 Ko HAYASHI


Photo:La Cathédrale de la Sainte-Trinité LAVAL 2016.2. ペイ・ド・ラ・ロワール地方の都市 ラヴァルの “Cathédrale de la Sainte-Trinité” ラ・サント・トリニテは、1070年、ラヴァル城の近くに建てられた教会で、 その建物は、何世紀にもわたって改築を繰り返してきた。 そのため、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロックなど、さまざまな建築様式が複合的に組み合わされ、その時々の変化の様子が随所に見られる。 そのせいだろうか。 その佇まいは、 赤いTwingoさえも、 よく似合う。