Cuvage(キュバージュ)の実施とリスクについて

“Cuvage” は、ステンレスやプラスティック製の容器で行われ、その目的・気温・果実の状態などによって、果肉(Pulpe)を寝かせる時間の調整が必要となる。

フランスにおける果肉のマセラシオン時間の目安は、気温10℃で2時間を基準に、5℃で2.5時間、12-13℃で1時間。そして、14-15℃を超えたら行わない。また、果実が健全で、使用する器具が清潔である場合に、8時間(MAX)まで。実際の現場では、作業工程上の都合が優先されることもあり、使用する機械設備によっても様々のようだ。もし、日本で行う場合は、果汁成分や製造工程の違いを考慮する必要があるかもしれない。

“Cuvage” には注意が必要だ。気温10度以下なら、それほど汚染について気にすることはないと言われるが、フランスでも多くの生産者が、オペレーションの優位性よりも、アルコール発酵の開始・果汁の変化などの様々なリスクがあると考えている。

長時間のマセラシオンは、発酵前の清澄工程(Défécation)を逆に難しくする可能性がある。早い段階でアルコール発酵が始まってしまうと、澱引きに最適なタイミングとなる前に、シャポーブランが崩壊してしまう。 また、衛生状態の悪い環境(汚染された器具やリンゴ)で Cuvageを行うことは、シードルの品質を著しく低下させる。こうした状況で果肉が空気に触れると酢酸菌が増殖し、“La piqûre acétique”(ピキュール アセティック・酸敗)の原因となる。

“Cuvage” は、AOC Cidre Pays d’Augeに定められている生産工程だが、AOC以外にもフランスの30-40%の生産者が行っているという。この数字からCuvageがフランスで一般的に行われているとは言えないかもしれないが、世界的にみれば多い方なのだと思う。

2021.3.19 Ko HAYASHI


Photo:Marché Saint-Marc ROUEN 2010.12. フランス人の書く「1」は見慣れないと読めない場合がある(黒板の文字はまだ良い方だ)。 ルーアンのマルシェに並んでいたリンゴは 「1€50/キログラム」だった。