旅の記録:Ferme de La Sapinière – Au coeur d’OMAHA BEACH

Ferme de La Sapinière フェルム サピニエールは、フランス・ノルマンディーのシードル生産者で、2013年と2018年に訪問した。

自社でリンゴを栽培、シードルからカルヴァドス、ポモーなどを製造し、個人経営の生産者としては比較的規模が大きく感じられた。


ドメーヌはノルマンディー上陸作戦で有名なOmaha Beachオマハ・ビーチSaint-Laurent-sur-Merにあり、果樹園は海から1kmも離れていない。

Saint-Laurent-sur-Merは、カルヴァドス県のベッサンBessinと呼ばれる地域にあたる。

海岸に近いことで、同じ品種でも内陸の果樹園に比べてリンゴの開花は1~2週間遅れるという。

果実の成熟も遅くなるため、積算気温が低く、結果として果実の総酸度が高くなるのが、この地の特徴。

当時の果樹園は17ha(Hautes-Tiges 9ha、Basses-Tiges 8ha)だが、現在はさらに拡大しているようだ。

32品種のシードルリンゴと2品種の洋ナシを栽培し、Douce MouenDouce Couetといったブルターニュの品種を除き、ほとんどがノルマンディーを代表する品種(当園でも馴染みのある Rouge DuretBedanなど)で構成される。

当然、ベッサンBessin特有の品種 Gros Bois de BayeuxGagnevinFeuillardも栽培。

最も有名なのは Marin Onfroyで、地元 Saint-Laurent-Sur-Merの領主であるMarin-Onfroyが、16世紀初頭に Biscaye(Pays Basque・Spain)から持ち帰って増殖したという、歴史的な品種だ。

ノルマンディー米軍英霊墓地 Normandy American Cemetery and Memorial(Colleville-sur-Mer)の入口にも、6haのリンゴ園がある。

Ferme de La Sapinièreからノルマンディー米軍英霊墓地へは、車で10分もかからない程近い。

(訪れたのは閑散とした冬の時期であったが、ビジターセンター入口で荷物検査をされるなど、施設内に緊張感が漂っていた)


初めて訪れた2013年には、醸造所内を案内していただいた。

定番のPressoir à bandeやDéfécationに適したCuve。(年代物の機械も現役のようだった)


特別なシードル「 Le Cidre Cuvée Louise Gautier 」は、Legallois家の祖母へのオマージュ。

彼女はここで作られたシードルを定期的に味わいながら、105歳(1902年-2007年)まで生きたという逸話がある。

このシードルはベッサンBessin由来の品種のみから作られ、フルーティーで軽く、まろやかで、ほんのり甘い。

ノルマンディーらしい特徴をもった、非常に高品質で、味わい深いシードルだった。


Ferme de La Sapinière

Route de Port en bessin – 14710 Saint Laurent sur Mer

2024.2.24 Ko HAYASHI