Calvados Pierre Huet:シードル醸造

Huet社のシードル醸造

リンゴは、洗浄・選別・破砕され、 桶の中で1~4時間寝かすことで(Cuvage)、果汁の色やアロマが増大、品質が向上する。 その後、プレスされ、弱い圧力による自然流下果汁 Jus de gouttesと強い圧力によるプレス果汁 Jus de presseが混合された結果として、ピュア果汁 pur jusを得る。こうして絞られた果汁は “Moût” と呼ばれ、残った搾りかす “Marc”は果樹園に撒かれる。 搾汁工程は、Cidre AOP Pays d’Augeの規定により、プレスは一度、1トンあたり最大750リットルまで。 Huet社では、レミアージュ Rémiageは行わず、通常 600~630リットルを搾汁、Cidre bouché、Pommeau de Normandie、Calvados に使用する。

*レミアージュとは、プレスされた搾りかす(Marc)に加水し、再度 圧搾する手法で、大手のシードルメーカーではよく行われているという。 2回プレスすることで、計900L/t の果汁を得ることができる。なお、Huet社のプレス機は、殆どのフランスの中規模~大規模シードル生産者がそうであるように、ベルトプレス Pressoir à bandeを使用。

シードル用に向けられる果汁は、 タンクに入れられると、 果実に含まれていたペクチンが凝固し始め、3~6日後、大部分の不純物を引き連れながら表面に浮いてくる。それらは「シャポーブランの上昇 Montée du chapeau brun」と呼ばれ、非常に良質な搾汁でなければ、このデフェカシオン Défécation とよばれる自然の清澄作用は生じない。 搾汁が浄化された結果、発酵はゆっくりとなり、よりフルーティーでアロマティック、長期保存できるシードルをつくることが可能になる。

清澄工程を経て、別のタンクに移された果汁は しだいに発酵が始まり、 2~4ヶ月かけて、リンゴに存在していた酵母によって果汁の糖分がアルコールに変わり、 シードルになっていく。(1ère FAに、培養酵母は使用しない)

瓶詰めは、ブレンドしてから行われ、同時に酵母が加えられる。 ボトルの中で発酵は続き、 2~4ヶ月間かけて自然の泡を蓄え、発泡性のシードルができあがり、 残留糖分量に応じて 「Doux 甘口 」「Demi-sec 中辛」 「Brut 辛口」となる。 Cidre AOP Pays d’Augeの規定により、火入れ Pasteurisationはしない。

Doux 甘口:42g/L以上(1.5% vol. à 3% vol.) 最も甘く、フルーティーな味

Demi-sec 中辛:28~42 g/L(3% vol. à 4% vol.) バランスが良く、全ての人に好まれる味。 Cidre AOP Pays d’Augeはこれにあたる

Brut 辛口:28 g/L未満(4% vol. à 5% vol.) 僅かな甘味、タニックで爽やかな味

カルヴァドス蒸留用に向けられる果汁は、デフェカシオン Défécationをしないで発酵させる。約5ヶ月後、全ての糖分がアルコール(5%~6% alc.)となり、蒸留用シードルが出来上がる。

(本内容は、Huet社の見解を明らかにするため、Pierre HuetのWebサイト文章を引用し、加筆、編集した)

2021.5.16 Ko HAYASHI


Photo:Place de Verdun BEAUMONT EN AUGE 2015.10. 小さな丘の上にある村 ボーモン アン オージュは、 海辺のリゾート地 ドーヴィルDeauvilleやトゥルーヴィルTrouville-sur-Merへ向かう途中、 休憩のため、何気なく立ち寄った。 思い掛けず、 可愛らしい建物や街並みがとても印象的で、 しばし 目的地のことを忘れて散策。