Pierre Huetでは、 2つのAOC(Appellation d’Origine Contrôlée)カルヴァドスを生産する。
“Calvados AOC Pays d’Auge” “Calvados AOC”
“Calvados AOC Pays d’Auge” は、規定により、単式の “Alambic à Repasse”(double distillation still)にて蒸留。 ”Repasse”(再び通る)という名前にあるように、連続的に2度加熱することで、シードルのエチルアルコールを分離。
最初の蒸留 Première chauffe は、蒸留用シードルを加熱。 蒸発して上昇したアルコールは冷却され、凝縮。 プティゾ “Petites eaux” と呼ばれる アルコール 30~35% vol.の蒸留酒を抽出。 2回目の蒸留は ボンショフ “Bonne chauffe” と呼ばれ、 最初の蒸留で抽出したプティゾ “Petites eaux” を熱し、 初めに抽出される テット “Têtes” と、 最後に出てくる クー “Queues”の部分を分離し、 蒸留の中間部分 クール “Cœur” を回収。 アルコール 70~72% vol.のオドヴィ “L’eau-de-vie” を得る。
“Calvados AOC” の蒸留は、連続式のアランビック “Alambic à colonne”を用いて、アルコール 70~72% vol.のオドヴィを抽出。
蒸留によって得られる リンゴのオドヴィは無色透明、フローラルでフルーティーなフレーバーをもち、揮発性のアルコールに富み、とても強い。 アルコール 40% vol.で商品化されるまでに、少なくても2年は樽で寝かす。
Huet社の蒸留器は、ノルマンディー唯一(?)の革新的な燃焼方式が導入されている。 これは、2010年の新築移転に伴って導入された技術で、持続可能な開発目標を視野に入れ、これまで使用していたオイル燃料を木材チップに変更。 また、環境に優しいだけでなく、原料の一部が 農業生産現場から供給されるため、より経済的なシステムとなっている。そして、将来の省エネ問題を考慮し、“Alambic à Repasse” は、アルコール蒸気を冷却する際に生成される熱湯を直接使用できるように改良。これらの熱は、冬の間、部屋の暖房に使用される。
カルヴァドスの熟成には、オーク樽が用いられ、長時間、樽と接触することで、その攻撃性が失われ、バランスのとれた、本質的なキャラクターを備える。 熟成中、オドヴィのボリュームは減り、アルコールは規則的に減少。この自然の蒸発は パールデザンジュ “Part des anges” 「天使の分け前」と呼ばれる。 カルヴァドス・空気・樽のタンニン成分の絶え間ない交流によって オドヴィは進展。 時間をかけて、色・樽感・繊細さ・しなやかさ・まろやかさが変化。 少しずつ、淡い金色から深い琥珀色へと変わり、フレッシュなリンゴのアロマは、バニラ・蜂蜜・スパイス・加熱したリンゴのニュアンスと結びついた複雑でフローラルな香りへと変化。
熟成とともに非常に重要なのが、アサンブラージュ “Assemblages”で、ブレンドによって、異なる香りや 様々な年代のカルヴァドスを組み合わせる。 Pierre Huetのように、長い歴史のある生産者は、ストックしているカルヴァドスの種類や量という点で、大きなアドバンテージをもつ。
2021.5.16 Ko HAYASHI
Photo:Port de Pêche BARFLEUR 2018.2. ノルマンディーには魅力的な港町が多い。 フランスの最も美しい村 Les plus beaux villages de France に認定されている バルフルールもその一つ。 早朝や夕方、 対岸から、 美しい景色を、 ただ ずっと眺める。