2019年1月18日、イギリスのSomersetサマセットを訪れ、サイダー生産者とチーズ製造者のお店を巡った。
WILKINS CIDER – “The world’s best cider….?”
WILKINS CIDERウィルキンス・サイダーのウィルキンス家は、1000年近くもの間、この地でサイダー生産を続けてきたという。
私たちが到着すると、PUBLIC ENTRANCEで Roger Wilkinsロジャー・ウィルキンス氏が出迎えてくれた。
彼はイギリスのサイダー業界の伝説的な人物。『毎日このサイダーを飲んでいるから、私は元気だ!』と言いながら、さっそく、製造施設を案内してくれた。
建物の中は、薄暗い。
その一角にLounge Barラウンジ・バーがあり、サイダーの入った樽、スナック類などのおつまみが並び、ジョッキが置いてある。さらに奥の部屋へ足を踏み入れると、バンクシーが描いたという、ロジャーさんをモチーフにした壁画が現れる。
平日の昼間。どこからともなく常連が(車で)集まってきて、サイダーを飲み出す。
「SWEET」「 DRY」と表示されている樽から、好きなサイダーを自分でジョッキに注いで飲むというシステムだが、価格表は見当たらない。
私たちが帰る時には、ロジャーさんは自宅に戻ってしまった。仕方なく、おじさん達に代金を払って精算したが、サイダー1杯の値段がいくらだったのか、今だにわからない。
地域に根ざしたサイダー文化の真骨頂を、ウィルキンス・サイダーで体験した気がする。
WILKINS CIDER
Lands End Farm, WEDMORE
THATCHERS CIDER – The Railway Inn at Sandford
THATCHERS CIDERサッチャーズ・サイダーは、1904年、Willian Thatcher氏が創業した北サマセットのサイダーメーカーで、現在まで4世代にわたってサイダーをつくり続けている。
Sandfordにある Railway Innは、パブとして約150年の歴史があるといい、サッチャー家によって新しく改修・復元され、伝統的なカントリーパブ・ラウンジ・レストランとして2015年にオープンした。そのバーには、サッチャーズの全てのサイダーの他、スピリッツ、エール、ラガーなどが揃う。
ここでもやはり、常連客が「いつもの一杯」を飲みながら、ゆっくりと午後の時間を過ごしていた。
パブの階段に飾られていたサッチャー家代々の家族の写真を見ると、ファミリーの「歴史」「絆の強さ」「サイダーづくりへの情熱」が伝わってくる。
THATCHERS CIDER COMPANY
Myrtle Farm, SANDFORD
Harry’s Cider – Traditional Somerset Cider
Harry’s Ciderハリーズ・サイダーは、南サマセットのサイダー生産者。
以前は酪農をしていたHarryハリー氏が、父親の果樹園に残されていたリンゴでサイダーづくりを始めたのが原点だという。
Browns Apple、Dabinett、Harry Masters Jersey、Yarlington Millなど、イギリスを代表するBitter系の醸造品種を用い、自然な製法でつくられるサイダーは数々の受賞歴があり、イギリス国内で高く評価されている。(ユニオン・フラッグの王冠が、どこか誇らしげで、可愛らしくもあり)
訪問当日は、約束していた到着時間を大きく過ぎてしまったが、とても親切に私たちを迎え入れてくれた。
醸造所とリンゴ園を案内していただき、最後にチェダーチーズをつまみにハリー氏のサイダーを飲む。
専用品種によるトラディショナルなサマセットサイダーは、チェダーのコクに負けない深みや奥行きがあり、その相性の良さは、噂通り。
わざわざサマセットを訪れなければならない理由を、この時、実感。
Harry’s Cider Company
Littlefield Lane, LONG SUTTON
The Cheddar Gorge Cheese Company – World’s oldest surviving makers of cheddar
Cheddarチェダー村を訪れた。目的はもちろん、本物のチェダーチーズを知り、味わい、購入するため。
チェダーチーズは、牛乳を原料とした、セミハードタイプのチーズに分類され、若いものは爽やかな酸味があり、熟成が進むにつれてコクと香りが増すという。
製法の特徴は、Cheddaringチェダリングにある。チェダリングとは、ホエイ排除後のカードを集めて融着させ、分割・反転・積み重ね・圧縮などを繰り返す工程で、これにより、「独特の酸味」「緻密」でありながら「もろさ」のある質感など、チェダーの特徴がもたらされる。
チェダーチーズは世界中でつくられ、世界で最も生産されているチーズとして有名だが、その名前があまりにも広く使われているため、原産地名称保護制度の対象となっていない。それ故、アメリカなどでは「チェダースタイル」のチーズが多く生産され「チェダーチーズ」として販売されている。それらは名前だけで、実際はプロセスチーズに分類される。
今回、訪れたお店は The Cheddar Gorge Cheese Company。
世界最古のチェダーチーズ製造会社といわれ、チェダー村に残る、唯一のチーズメーカー。
帰国後も、チェダー村で買ったチェダーチーズをつまみに、サマセットのサイダーを飲んだ。
両者は、切っても切り離せない関係であることを、再認識。
2024.3.13 Ko HAYASHI